電子辞書
2004.7.9
電子辞書を比較する上での基本的な知識とメーカーごとの製品の発売の傾向をまとめました。たくさんあってなかなか区別しにくい個々の電子辞書を比較する上での参考にしてください。

電子辞書の製造コストについて

電子辞書の製造コストを知ることは、違いの分かりにくい電子辞書という製品のコストパフォーマンスを知る上で役に立つので、ここで紹介する。
電子辞書の主な製造コストは、以下になる。
  1.筐体製造費(液晶ディスプレイ以外)
  2.液晶ディスプレイ
  3.メモリ
  4.筐体開発費
  5.検索ソフトウェア開発費
  6.辞書コンテンツのロイヤリティ費
このうちで、発売メーカーや機種ごとで大きく異なるのは、2と3と6だ。購入者はこれらのポイントを考えながら価格表を見るのがいい。
液晶ディスプレイの表示サイズや表示精度がよくなるほど電子辞書の価格は上がる。辞書コンテンツを多く搭載していればいるほど辞書コンテンツのロイヤリティが高くなり、また記憶容量の大きなメモリを必要とするので電子辞書は高くなる。

5は製造コストにあまり関係ないことも知っておくといい。検索方法や表示の機能がたくさんあるほど、または、独自の機能によって、電子辞書の価格は変わりそうなものだが、実際にはあまり関係ない。ただし、その辞書にしかないようなコンテンツ(例えば単語クイズとか日英以外の辞書)では、別途ソフトウェア開発費がかかる場合もあるので、それらのコンテンツの分だけ価格は高くなるだろう。

辞書コンテンツのクオリティについて

あまり知られていないが、同じコンテンツでも、メーカーごとにそのクオリティ(誤字や誤表記の含有率や表示項目の数)は違うことが多い。
例えば「広辞本」という国語辞書があるとすると、AとBのメーカーで発売されている電子辞書では、全く同じ表示ではない。
メーカーによるチェック体制・管理体制に違いがあるからだ。

一般に、紙の辞書のデータが電子辞書のデータになるまでには(1)印刷データを単純データに変換→(2)誤字・誤植の修正→(3)電子辞書メーカーでのチェック→(4)電子辞書用のデータに変換→(5)搭載、という流れをとる。この流れの中で、ひとつの電子辞書のコンテンツが出来上がるまでには(2)(3)の作業を幾度となく繰り返すわけだが、そのチェック精度はメーカーごとの違いがある。
また、その電子辞書メーカーにおいて過去において利用したことのあるコンテンツと全くの新規で搭載したコンテンツでは、そのデータの信頼度は違ってくる。もちろん、過去において搭載されている辞書データの方が信頼度は高い。

メーカー別の製品開発の傾向

カシオ
「エクスワード」ブランドを展開。電子辞書のシェアNo.1の地位を維持し続けている。
似たようなたくさんの種類の電子辞書を販売しているので、基本的な型番の見方を知っておくとよい。 例えば「XD-V9000」という型番だと、「XD-」は、カシオの全電子辞書に共通。「V」が機種を大別するコード、「9000」は、9000番台のシリーズ(小別するコード)であることを示す。
なお、最後の数字は大きくなければなるほど、必ずしも上位機種というわけではない。
大別コードは、現状はWとHとLシリーズが最新バージョン。それぞれ、W=文庫本サイズ、H=ハガキサイズ、L=リスニング機能付機種であることを指している。WとHとLシリーズが最新シリーズだが、その前がVシリーズ、その前がRシリーズ、その前がSシリーズ。おそらく、搭載されている検索用のソフトウェアなどもこの大別コードの順にバージョンアップしていると思われる。
2004年度の新モデルでは、音声(英語をはじめ中国語・フランス語・ドイツ語など)を聞くことができる機種がブレイク。高校生マーケットの獲得にも積極的に乗り出して成功を収めている。

ソニー
他社の電子辞書メーカーが、搭載するコンテンツを微妙に変えて多くの機種を発売する中、ソニーは機種を絞り込んで開発・販売を続けている。
筐体の特徴は、筐体にジョグダイヤルを搭載していること。また、2004年度モデルの主力3機種すべてにメモリスティックスロットがついて、辞書コンテンツを差し替えて使えるようになったことも注目される。

最新モデルの3機種は「EBR-120MS」と「EBR-100MS」と「EBR-S1MS」。
それぞれ、本体にはすでに34辞書、12辞書、33辞書を搭載している。さらに、別売のメモリスティックをスロットに入れて辞書コンテンツを差し替えて使うことができる。別売メモリスティックは、8タイトル58辞書コンテンツがすでに用意されている。

SII(セイコー)
早くから、英英辞典や英語類語辞典などを搭載した英語学習を特に意識した電子辞書を発売。「英語学習なら、SIIの電子辞書」といったブランドイメージを確立している。
今でも、英語系辞書コンテンツのバリエーションの多さは他メーカーを圧倒している。
筐体の特長は、主要機種のキー入力部分が、パソコンなどで使用されているフカフカのキーボードを採用していること。総じて筐体はなかなかカッコイイ。

シャープ
シャープのお家芸「液晶」を大々的にアピールして売上をのばしている。
カラー液晶の電子辞書を発売しているのもシャープ。SDカードスロットに別売のコンテンツカードを差し込んで、辞書データを差し替えて使える機種も多数発売している。

キヤノン
戸田奈津子をタレントして使い「ワードタンク」ブランドを展開。
日本史事典、世界史事典、英単語ターゲット、英熟語ターゲット、古語辞典などを搭載した、明らかに高校生を対象とした電子辞書を早い時期から発売している。他の電子辞書メーカーが、多コンテンツ搭載型のオールインワンタイプの機種を多数発売する中で、搭載コンテンツをある程度絞った販売ターゲットのはっきりした製品を揃えている。低価格製品にも力を入れている。

その他独立系
株式会社ユニバーサルウイングより10ヶ国語音声付翻訳機(各言語につきそれぞれ約2万語の単語と2300の慣用句を収録)を発売。